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明々後日

2008-05-01

[]私の男 15:40

私の男

私の男

あまりにも長いあいだ一緒に暮らしたので、わたしと、私の男は、いまではあまり会話というものをしなかった。好奇心と興奮に満ちたやさしい時期なんて、たぶん六、七年もむかしに、とっくに過ぎていた。残ったのは、ただしつっこい、情愛みたいなもの。この人しかいないという、信仰にも似た、確信。でも、神様も家族もなんにも持たないわたしにとっては、どうしても必要なものだった。いつのころからか強く頼るようになって、やがて、離れられなくなったのだった。

最後の章を読んで、また最初のページに戻った。思わず、彼らのその先の、明日を知りたいと、二人の今後に思いをはせた。このような激情を抱えながら生きることは、幸福なのか不幸なのか。細かい部分で気になるところはいっぱいあるんだけど、それが小説の致命傷になってないのがすごい。そんなの気にならないくらい、彼らの激情におぼれるように読んでしまった。いやあ、傑作、と唸った。読み終えても、ふとした瞬間に思い出す。彼らのこと。

2008-04-17

[] 13:04

本棚

本棚

本好きで本にブックカバーをかける人って少ないんですね。ここで取り上げられた人だと、山本幸久さんくらい?みうらじゅんの本棚と、本へのスタンスがおもしろかったなぁ。独特。写真は、ちょっとかゆいところに手がとどかない感じ。もっと鮮明な、本のタイトルわかるものが良かった。そのぶん、インタビューはどれもおもしろくて興味深い。

わたしはブックカバーが好きで購入した本には雑誌以外ぜんぶカバーをかけてもらう反エコな客。本棚にもむぞうさに詰め込んでゆくので、どこになにがあるのかさっぱりわからない。高校まではどこに何があるのか、だいたい把握していたんだけど。大きな本棚1つに、カラーボックス4本が6畳につめこまれているのだから(机とベッドなどもある)そのうち絶対沈むと思う。

2008-04-05

[]先生とわたし 14:26

先生とわたし

先生とわたし

由良君美との出会いから別れ。由良君美の名前をわたしは知りませんでしたが、ちょうど同じ時期に読んでいた坪内祐三『文庫本福袋』で一行くらい「美文家」って書いてあった(たしか…)ので、そうなんだぁと思ったり。

『先生とわたし』というタイトルがたいそうエロスを感じると思って、そして四方田さんがけっこう好きなこともあって読んでみたけれども、日本で一番頭の良い大学の学生と先生ってすごいんだなぁと思いました(小学生)。まず最初にそれを思った。ここまで勉強している人が研究者とかになるんだな…。わたしは自分の肩書きを院生って言えない…と。ここまで勉強してないもの…。と、まぁ最初はきらきらまぶしい最高学府の学生生活と錚々たる名前が描かれすげーと思うことしきり。由良君美の出自(父親のこととか、すごい)から研究、そしてその後の師との別れ。刺激的でおもしろく、そして残酷だなと思った。ハイデッガーフッサール漱石『こころ』等の師弟論もおもしろくて、とにかくつまらないところがないのがすごい。どこもかしこも詰まっている。

キノベス2007の9位。紀伊国屋のスタッフってすごいと思う…。

http://booklog.kinokuniya.co.jp/kinobest2007/archives/2007/12/9.html

この本にも出てくる高山宏書評も興味深い。あと、ねこ ねこ先生のブログで、四方田さんの韓国行きを批判した先生の名前がわかってへぇーと思いました。

追記。

この本には由良君美をおくる詩として、矢川澄子の詩が読める。どうやらこの詩は作品集成にも載ってないそうです。好きなものがつながる瞬間を感じた。

2008-03-27

[]文庫本福袋 13:55

文庫本福袋 (文春文庫)

文庫本福袋 (文春文庫)

2000年~2004年雑誌に連載されていたもので、単行本の出版が2004年文庫化2007年。惜しいことしたなぁと思った。単行本で読んでおけばよかった。坪内さんの取り上げる文庫本は地味で渋くてものすごく初版部数が少なそう(失礼な)で、いまの時点(2008年)では手に入らない文庫ばっかり!!くっそー、読みたい本が手に入らないって、こんなに腹立たしいことはない。

内容はとにかく硬軟とりまぜた本ばかりで、どれもこれも読みたくなった。わたしは常々同世代の坪内祐三が欲しいと思っている。坪内祐三のように、知識が豊富で教養がありとてつもなく本を読んでいて音楽も聴けばテレビも映画も観、オタク文化もそれなりに通じている、そんな同世代の評論家が欲しい。坪内さんの書く本をわたしは愛読しているけれども、どうしても彼が過ごした青春時代をわたしは知らない。同世代の坪内祐三が現れれば、その時代を共有できて、さらに楽しく読めるのでは、なんて思う。そろそろ出てきてもいいよねえなんて勝手に期待している。

2008-03-24

[]君のためなら千回でも 22:54

読みやすくてアフガニスタンという文化も歴史もあまり知らない国のことでも、すっと入ってくる。凧追い(カイト・ランナー)の描写もわくわくした。訳文だけじゃなく原文も良いんだろうな。タイトルも印象的。「君のためなら千回でもアフガニスタン独特の言い回しだそう。子ども時代の幸せな描写がすばらしく、だからこそ、後半にあらわれるタイトルの言葉に涙が。同じ言葉でも、意味は違ってくる。裏切りと贖罪の話であると同時に、父と子の話、血の話でもあった。

アフガニスタンという国を描いた小説だからこそ、どうしても現実の問題と切り離せずに読んでしまっていた。だから、わたしはこの本でとても泣いてしまったけど、同時にたらふく食って暖かいベッドで眠れて毎日安穏とすごしている自分が泣くってどうよ、と思ってしまう。これは作品がどうのというよりも、自分の問題だけど。

歴史はそれほど抗いがたかったし、地域にしてもそうだった。結局わたしはパシュトゥーン人であり、ハッサンはハザラ人だった。わたしはスンニ派で、ハッサンシーア派だった。なんだろうと、両者の壁を超えるきっかけにはならなかったのだ。なんだろうと。

階級社会のなかで自分の位置を胸に刻みつけて生きるのは、どんな気分なのだろう。

私だって、ここ半年給料をもらってない。この孤児たちのために貯金も使い果たしたから一文無しだ。私の財産も親から受け継いだ遺産もすべて、この神に見放された孤児院を切り盛りするために売り払った。私にはパキスタンイランに家族がいないと思ってるのか?私だって、ほかのみんなと同じように逃げることもできたんだ。だが私は逃げなかった。この国に留まった。あの子たちのために、ここに留まったんだ

読み終えて町山さんのポッドキャスト聴いてみた。映画も見てみたくなった。

君のためなら千回でも(上巻) (ハヤカワepi文庫)

君のためなら千回でも(上巻) (ハヤカワepi文庫)

君のためなら千回でも(下巻) (ハヤカワepi文庫)

君のためなら千回でも(下巻) (ハヤカワepi文庫)