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本を読む女のメモランダム

2008-05-04

「私的生活」田辺聖子 18:16

私的生活

私的生活

「お芝居やと知らんかった人は、かなわんやろうなあ」

中杉氏は呟くので、

「あ!いわんといて、いわんといて、胸が痛うなる!」

2008-05-01

「天才たちの値段」門井慶喜 18:16

天才たちの値段

天才たちの値段

「ひとりの人間を知るのは一つの図書館をまるごと買い占めるに等しい。」

2008-04-30

「キリハラキリコ」紺野キリフキ 00:18

キリハラキリコ

キリハラキリコ

暦屋の娘に突然呼び出された。

「キリコさんは、わたくしの心のお姉様です・・・・・・」

思春期は恐ろしいな、と思った。

2008-04-17

「MAMA」紅玉いづき 22:54

MAMA (電撃文庫)

MAMA (電撃文庫)

ダミアンだけが、彼女を嘘つきだと言った。

悪魔つきでも先祖返りでも、魔女でも占い師でもなく嘘つきだと言った。彼の言葉が清々しかったから、ミレイニアは正解をそれに決めた。ダミアンの言葉を正解に決めた。ともに生きる人間を、彼にした。

戯れのように『兄さん』と呼んでみた。彼はそれを受け入れてくれた。

2008-04-14

「言い寄る」田辺聖子 21:55

言い寄る

言い寄る

世の中には二種類の人間がいる。言い寄れる人と、言い寄れない人である。私にとって五郎は「言い寄れない」人であった。ほんとに言い寄れるのは、あんまり愛してない人間の場合である。

失敗したってどうせモトモト、というような、間柄のときだけである。

言い寄って拒絶されたら、さしちがえて死のうというような、しんから惚れてる人間の場合は、これは失敗を許されないから、究極のかたちは強姦致死になってしまう。

男が女に惚れて、そういう命がけの言い寄りかたをし、強姦致死となっても、それは、理に叶っている。

だが、女なら、どうしてくれるのだ。

カバーもはずさないベッドの上に腹ばいになって、

「フンフンフン・・・」

なんて鼻唄をうたいながら、少女マンガ週刊誌にのっている私のマンガを見る五郎を、私はどうやって強姦致死させればよいのだ。

サマにならないのだ。

2008-04-12

「オブ・ザ・ベースボール」円城塔 21:46

オブ・ザ・ベースボール

オブ・ザ・ベースボール

オール。ライト。

全ては正しく間違っている。

カモン。

2008-04-10

「カソウスキの行方」津村記久子 21:26

カソウスキの行方

カソウスキの行方

自分の頭の中で何があったのか、イリエはじょじょに悟りつつあった。自分にいいことがあってはいけないと思ったのだった。自分に悪いことがあった日、森川にはいいことがあった。だから、自分にいいことがあっては森川に悪いことが起こってしまうと考えたのだった。

2008-03-25

「虐殺器官」伊藤計劃 19:18

虐殺器官 (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション)

虐殺器官 (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション)

ぼくの母親を殺したのはぼくのことばだ。

2008-03-16

「九月の恋と出会うまで」松尾由美 00:43

九月の恋と出会うまで

九月の恋と出会うまで

一緒にいないといけない。ぼくに感謝するためではなく、ぼくを責めるために。

ぼくは一生、それを引き受けます。だから一緒にいなくちゃいけない。暑い夏も、寒い冬も。病気の時にも、元気な時にも。夜中にふっと目がさめた時にも

2008-03-15

「青空の卵」坂木司 00:39

青空の卵 (創元推理文庫)

青空の卵 (創元推理文庫)

 鳥井、鳥井、壊れないでくれ。僕が悪いのなら、どんなことでも直すから。鳥井がいなかったら、僕はきっと今みたいに物わかりのいい、お馬鹿さんなんかじゃないんだからな。笑顔を出し惜しみして、人を疑って、まっすぐな気持ちなんて誰にも見せない、そんな損得勘定の上手な、世渡り名人になってたはずなんだからな。でも鳥井がいたからこそ、僕は今みたいな僕になることができたんだよ。

鳥井のまっすぐな瞳が、僕の背すじをのばしてくれる。

鳥井がいなかったら、僕はきちんと歩けない。

だから、言ったじゃないか。

依存してるのは、僕の方だって!

2008-03-14

「黄金の王白銀の王」沢村凛 00:35

黄金の王 白銀の王

黄金の王 白銀の王

「『鳳穐を殺せ』。どうしてそれが、子供への最期のことばなのだ。私だったら、鶲にそんなことばは遺さない。元気でいろとか、ぶじに逃げのびろとか、何かそういうことを言う」

 穭は、自分の両親の死に際を思い出した。

 真っ赤に充血した目、こけた頬、ひび割れた唇。ひとつ息をするのに、俵を持ち上げるほどの力をこめているような吐息。そんな状態で、十六歳の一人息子にかけたことばが、「旺廈を殺せ」だった。

 薫衣の言うとおりだ。自分だったら、子供の行く末を心配する。健康を、幸せを祈る。

 それができないほど、父母の中で、旺廈への憎しみは大きかった。

 そうだ。彼と薫衣は、何もなしとげていないわけではない。少なくとも、彼と薫衣が、こうしてあたりまえの遺言を思いつけるようになった。それだけでも、何かが大きく変わったのだ。

2008-03-13

アフターダーク村上春樹 00:27

アフターダーク

アフターダーク

「人にはそれぞれの戦場があるんだ」

2008-03-08

「弱法師」中山可穂 00:48

弱法師(よろぼし) (文春文庫)

弱法師(よろぼし) (文春文庫)

わたしは強いのではない。

まだ誰かを死ぬほど愛したことがないだけだ。

愛するひとにこのからだを愛撫され、その手のかたちで捏ねられ美しく磨き立てられた賜物のような乳房をいまだ持たず、持たざるがゆえに失う悲しみもいまだ知ることがないだけだ。

愛するひとが黄泉の国へ旅立つとき、あの世への手土産に丹精した乳房を差し出すような、なりふりかまわぬ捨て身の恋を一度もしたことがないだけだ。

喉から血を流していとしい誰かの名前を呼び続けたことも、胸の谷間から脂汗を流してかつてそこにあったやさしい手の記憶を反芻し続けたこともない。

わたしは恋も、愛も、天国も、地獄も、何も知らない。

2008-03-07

津軽太宰治 00:28

津軽 (新潮文庫)

津軽 (新潮文庫)

けれども私は本心は、そんなに口惜しくもなかったのである。いい文章を読んで、ほっとしていたのである。アラを拾って凱歌などを奏するよりは、どんなに、いい気持のものかわからない。ウソじゃない。私は、いい文章を読みたい。

平和とは、こんな気持の事を言うのであろうか。もし、そうなら、私はこの時、生れてはじめて心の平和を体験したと言ってもよい。先年なくなった私の生みの母は、気品高くおだやかな立派な母であったが、このような不思議な安堵感を私に与えてはくれなかった。世の中の母というものは、皆、その子にこのような甘い放心の憩いを与えてやっているものなのだろうか。そうだったら、これは、何を置いても親孝行をしたくなるにきまっている。そんな有難い母というものがありながら、病気になったり、なまけたりしているやつの気が知れない。親孝行は自然の情だ。倫理ではなかった。

2008-03-06

「乳と卵」川上未映子 00:28

乳と卵

乳と卵

それから自分の背丈を越えた柱のような巨大な赤鉛筆を抱えて、さらに巨大な紙に、大きなしるしをつけてゆかなければならないというような心象がたちこめて、重さだるさに意識がねっとりと沈んでゆくなか、生きていく更新が音もなく繰り返される。

緑子、ほんまのことって、ほんまのことってね、みんなほんまのことってあると思うでしょ、絶対にものごとには、ほんまのことがあるのやって、みんなそう思うでしょ、でも緑子な、ほんまのことなんてな、ないこともあるねんで、何もないこともあるねんで。

2008-03-03

犯人に告ぐ雫井脩介 00:29

犯人に告ぐ〈上〉 (双葉文庫)

犯人に告ぐ〈上〉 (双葉文庫)

「あなたは刑事の血を知らない。思い上がりではなく、正直に言ってるだけです。これは紛れもなく私の捜査です」

「正義は必ずお前をねじ伏せる。いつかは分からない。おそらく正義は突然、お前の目の前に現れるだろう。首を洗ってそのときを待っていろ。以上だ」

私の感想

2008-03-01

奇術師クリストファー・プリースト 00:29

 チンの有名な金魚鉢は、突然の謎めいた出現にそなえ、手品実演中、ずっとチンとともにあったのだ。その存在は、観客から巧みに隠されていた。チンは身に着けているゆるやかな中国服の下に金魚鉢を隠し、両膝ではさみ、ショーの最後にみごとな、一見したところ奇跡としか思えない取りだし芸をおこなう用意をしていたのだ。観客のだれも、そんなふうにその手品が演じられていたとは想像だにできぬだろう。すこしでも論理的に考えれば、謎は解けたはずなのだが。

 しかし、論理は不思議にも論理自体と衝突したのである!重たい金魚鉢を隠すことができる唯一の場所は、中国服の下なのだが、それでもそれは論理的に不可能だった。チン・リンフーがきゃしゃな体をしているのはだれの目にも明らかで、実演中ずっと足を痛そうにひきずっていた。ショーの最後に頭を下げると、アシスタントにもたれかかり、ひきずられるように舞台から下がっていくのがつねだった。

 現実はまったくことなっていた。チンは非常に体力のある健康な男であり、余裕綽々で金魚鉢を膝ではさんでいたのだ。そうだとしても、金魚鉢の大きさと形のせいで、歩く際に纏足された中国人のようによちよち歩きをせざるをえなかった。その歩き方は手品のタネを明かしてしまう危険性があった。移動する際に関心を集めてしまうからだ。秘密を守るため、チンは生涯足をひきずって歩いた。いかなるときも、自宅や往来でも、昼も夜も、秘密がばれないように普通の足取りで歩くことはけっしてなかった。

 これこそ、魔法使いの役を演じる人間の性質というものである。

私の感想

2008-02-28

「中原の虹」浅田次郎 00:30

中原の虹(全4巻セット)

中原の虹(全4巻セット)

正義に理屈はない。勝敗も利害もない。おのれを生み育んだ風や大地を愛し、常にともにあること、それが正義だ。

2008-02-19

カラスジョンソン明川哲也 00:30

カラスのジョンソン

カラスのジョンソン

「消滅」

不安定の根源にあるものをジョンソンは訴える。

すると緑光はいっそう強い瞳の光を放つ。

「誕生」

翼が重なるのはそれからだった。

ナクナ。

ナクナ、ナクナ、ナクナ。

マモッテヤルカラ。

2008-02-17

「鯨の王」藤崎慎吾 00:30

鯨の王

鯨の王

「ああ、どうなんだろうな。しかし、やってくれれば俺としてはありがたい。ぜひやるべきだ。何百メートルの深海にまで、人間がうろちょろする必要はないよ。こんなに暗くて寒くて息苦しい場所くらいは、せめて他の生き物たちだけのために残しておいてもらいたいもんだ」

「そう言う私たちも、こうしてうろちょろしてますけど」

「確かに」須藤は苦笑した。「じゃあ早いところクジラと仲直りして、海上へ戻ろう」

ホノカはうなずいた。

「そうですね」

「……初めて意見が合ったな」