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2008-03-14

「黄金の王白銀の王」沢村凛 00:35

黄金の王 白銀の王

黄金の王 白銀の王

「『鳳穐を殺せ』。どうしてそれが、子供への最期のことばなのだ。私だったら、鶲にそんなことばは遺さない。元気でいろとか、ぶじに逃げのびろとか、何かそういうことを言う」

 穭は、自分の両親の死に際を思い出した。

 真っ赤に充血した目、こけた頬、ひび割れた唇。ひとつ息をするのに、俵を持ち上げるほどの力をこめているような吐息。そんな状態で、十六歳の一人息子にかけたことばが、「旺廈を殺せ」だった。

 薫衣の言うとおりだ。自分だったら、子供の行く末を心配する。健康を、幸せを祈る。

 それができないほど、父母の中で、旺廈への憎しみは大きかった。

 そうだ。彼と薫衣は、何もなしとげていないわけではない。少なくとも、彼と薫衣が、こうしてあたりまえの遺言を思いつけるようになった。それだけでも、何かが大きく変わったのだ。

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