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2008-03-08

「弱法師」中山可穂 00:48

弱法師(よろぼし) (文春文庫)

弱法師(よろぼし) (文春文庫)

わたしは強いのではない。

まだ誰かを死ぬほど愛したことがないだけだ。

愛するひとにこのからだを愛撫され、その手のかたちで捏ねられ美しく磨き立てられた賜物のような乳房をいまだ持たず、持たざるがゆえに失う悲しみもいまだ知ることがないだけだ。

愛するひとが黄泉の国へ旅立つとき、あの世への手土産に丹精した乳房を差し出すような、なりふりかまわぬ捨て身の恋を一度もしたことがないだけだ。

喉から血を流していとしい誰かの名前を呼び続けたことも、胸の谷間から脂汗を流してかつてそこにあったやさしい手の記憶を反芻し続けたこともない。

わたしは恋も、愛も、天国も、地獄も、何も知らない。

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